『広島県金属防食技術研究会』
-材料のサビや腐食発生メカニズムを解明し、新たな技術開発へ幅広く検討する-
 (公財)ひろしま産業振興機構では、H23年度開催した広島工業大学の王栄光准教授 (発表テーマ:防食を中心とした金属材料の表面改質と機能性評価)の研究室訪問で参加者から「金属の腐食・防食について理解を深めたい」という多くの声を受けて、 王先生の研究シーズをベースとし平成24年1月26日に「広島県金属防食技術研究会」 を新たに設立し、材料のサビや腐食発生メカニズムの解明により、新たな技術開発に向けて幅広く検討することとしております。
○「広島県金属防食技術研究会」会員募集のご案内
■研究テーマ @異種金属接触腐食のメカニズム解析と防食対策
A表面改質・コーティングによる金属腐食の防止 image
B金属表面の水濡れ制御と腐食防止
Cその他
■ 活動期間 3年間/年2〜3回程度
■ 参加費用 原則、無料(ただし、必要に応じ実費負担もあり)
■ 募集対象 企業、大学等、国・公設試験研究機関等
○ 第1回研究会開催(平成24年1月26日開催)
■日  時 平成24年1月26日(木) 14:00〜16:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 第2研修室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆基調講演 「腐食・防食の基本と実際」
講 師:長野 博夫氏 氏
(株式会社 材料・環境研究所 代表取締役 元広島大学大学院工学研究科教授)
<講演概要>
 鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属は、インフラストラクチャー、各種設備や機器、或いは 社会生活用品になくてはならない材料である。 金属を上手に、経済的に活用することが大切であり、その一環として腐食防食の基本と実際を把握する必要がある。そこで本講演では、腐食の基本 としての 局部電池の生成による腐食理論、水質・材質と腐食、金属の電位-pH図の意味および腐食三態、腐食・防食の実際としての鉄鋼の大気腐食 およびステンレス鋼の耐食性を説明する。
  ◆話題提供 「王研究室の腐食防食について」
発表者:王 栄光 氏 (広島工業大学 工学部 機械システム工学科 准教授)
「研究会の今後の進め方について」
○ 第2回研究会開催(平成24年5月31日開催)
■日  時 平成24年5月31日(木) 14:00〜16:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 第1、2研修室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆基調講演 「やさしい金属腐食のはなし 〜 腐食のメカニズムと腐食速度の測定 〜」
講 師:王 栄光 氏
(広島工業大学 工学部 機械システム工学科 准教授)
<講演概要>
 鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの腐食を防ぐためには、腐食発生のメカニズムを理解し、腐食速度を測定することが重要である。 本講演では、はじめに、金属元素の起源、金属原子の内部構造および金属原子同士の詰まり方について説明し、 次に金属腐食反応の特徴であるカソード/アノードの分離電子の移転および腐食電流の発生に関するメカニズムを説明する。 また、カソード分極およびアノード分極の概念と測定方法を解説し、分極曲線から、簡易・迅速的に腐食速度を得る方法を紹介する。
  ◆話題提供 「防食技術の情報提供」
発表者:王 栄光 氏 (広島工業大学 工学部 機械システム工学科 准教授)
○ 第3回研究会開催(平成24年9月14日開催)
■日  時 平成24年9月14日(金) 14:00〜16:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 第1、2研修室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆講 演 「マクロセル腐食 〜 局部腐食のメカニズム 〜」
講 師:松村 昌信 氏
(広島大学 工学研究科 化学工学専攻 名誉教授 )
<講演概要>
マクロセル腐食は、ミクロセル腐食の対語である。ミクロセル腐食は全面 均一腐食の発生機構であり、マクロセル腐食は局部腐食の発生機構である。 したがって、マクロセル腐食が分れば、異種金属接触腐食、孔食、隙間腐食、 粒界腐食、エロージョン−コロージョン(FAC、流速差腐食)、応力腐食割れ などの局部腐食の発生機構が分る。本講演では、これらの局部腐食の浸食速 度が10mm/y(1年間に10ミリ)もの高速に達する理由と、どうすればこれ らの局部腐食を予防できるのかを説明・解説する。
  ◆会員発表 「微生物腐食による金属腐食 〜世界をリードする日本の微生物腐食研究〜」
発表者:若井 暁 氏 (広島大学大学院 生物圏科学研究科 微生物機能学研究室 研究員)
<発表概要>
 微生物腐食とは微生物が金属材料の腐食に関与する現象である。定義はシンプルであるが、 実際は非常に複雑な現象である。過去の研究、間違った解釈、最新研究などを微生物研究者の視点から紹介する。
○ 第4回研究会開催(平成25年6月21日開催)
■日  時 平成25年6月21日(金) 14:00〜17:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 第1研修室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆講 演 「ステンレス鋼の腐食と材料開発」
講 師:原田 和加大 氏
(日新製鋼株式会社 技術研究所 ステンレス・高合金研究部 材料第二研究チーム チームリーダー)
<講演概要>
 ステンレス鋼は表面に極めて薄い不動態皮膜を有するため に、優れた耐食性を示す。しかし、
ステンレス鋼も金属材料であるがゆえに使用環境や構造によっては腐食を生じる。
  孔食、隙間腐食、応力腐食割れおよび粒界腐食はその代表的な腐食形態である。 それらの腐食に対して耐食性を有する ステンレス鋼が開発されている。
  ステンレス鋼の基礎、腐食形態とそのメカニズムならびに 耐食ステンレス鋼の開発思想に関して、材料屋の立場から解説する。
【ステンレス鋼の不動態皮膜】
  ◆会員発表 「表面反応測定装置を使った腐食電位の計測」
発表者:和田 裕幸 氏 (ヒロコン株式会社 代表取締役)
<発表概要>
 金属腐食の状態(腐食電位)を簡単に測定する方法として、 「表面反応測定装置RM201」を紹介する。この装置は、独立行政法人物質・材料研究機構の協力によりヒロコン株式会社が 開発・販売している製品で、非接触で金属表面の電位を測定する。この製品の開発の経緯、これまでの利用例、また特徴、 測定方法などを説明する。
【表面反応測定装置 RM20】
  ◆話題提供 発表1:「環境にやさしい防食性凍結防止剤の開発」
発表者:王 栄光 氏 (広島工業大学 工学部 機械システム工学科 准教授)
発表2:「金属の撥水化処理と耐食性評価」
発表者:金子 純也 氏(広島工業大学大学院 工学系研究科 王研究室)
○ 第5回研究会開催(平成26年3月13日開催)
■日  時 平成26年3月13日(木) 14:00〜17:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 第3研修室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆講演1 「実機における機械的劣化と腐食の重畳現象およびその対策」
講 師:礒本 良則 氏
(広島大学 大学院工学研究院 化学工学講座)
<講演概要>
  発電設備、化学プラントなどに用いられる金属材料は必ず 機械的、あるいは電気化学的に劣化する。また、実際の材料劣化はこれらの重畳現象であることが多く、不慮の損傷事故や や経済的損失に繋がる。本講演では、機械的劣化現象(ここでは特にエロージョン)および電気化学的な材料劣化現象 (腐食)の基礎・原理について紹介し、次にこれらの重畳現象を簡単に説明する。 また、現場に適用できる腐食防食対策およびその考え方について述べる。
【液滴衝突エロージョン損傷穴(液滴速度200m/s)】
  ◆講演2 「モップ式電解処理によるステンレス鋼の耐食性向上」
講 師:大田 利行 氏
(株式会社ケミカル山本 技術部 主査)
<講演概要>
  オーステナイト系ステンレス鋼は加工性に優れ、高い耐食性を有している為、 いろんな分野で使用されている。しかし、特に溶接部の表面処理方法によっては、使用環境により腐食を生じる。
  F,B含有中性電解処理により、ステンレス鋼の耐応力腐食割れ性、耐孔食性、耐暴露性が、未処理や従来常用されてきた 硝フッ酸処理に比べ飛躍的に向上する。本電解処理法はモップ方式の為、現地施工が可能であり、廃液がほとんど発生しない。 又、中性電解液である為、作業者や環境に対し安全である。 
  ここでは、 (1)基礎試験結果、(2)検証試験結果、(3)メカニズムの考察について述べる。
【表面反応測定装置 RM20】
  ◆会員発表 「コンクリート構造物の塩害劣化と電気防食」
発表者:小林 浩之 氏  (株式会社ナカボーテック 技術研究所)
<発表概要>
  近年、塩害によるコンクリート構造物の早期劣化が社会的な問題となっている。 塩害対策として断面修復や表面被膜などが行われてきたが、いずれの方法も再劣化の問題を抱えている。
  そのような中で電気防食は有効な塩害対策として注目を浴びており実績を伸ばしている。
  塩害劣化と電気防食法のメカニズムを解説するとともに、鉄筋の腐食状態をモニタリングする方法について紹介する。
【電気防食法の適用事例(ALAPANEL)】
<施工前> <施工後>
  ◆話題提供 「電極電位の裏を見てみよう」
  発表者:王 栄光 氏 (広島工業大学 工学部 機械システム工学科 准教授)
○ 第6回研究会開催(平成26年9月5日開催)
■日  時 平成26年9月5日(金) 14:00〜17:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 第1研修室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆講 演 「マグネシウムへの表面処理の現状と課題」
講 師:日野 実 氏
(広島工業大学 工学部 機械システム工学科 教授)
<講演概要>
 マグネシウム合金は、比強度・比剛性に優れているため、自動車・電子機器を中心に軽量化材料として、 その適用が拡大している。しかし、マグネシウムは熱力学的に活性な金属であるため、常に腐食が問題視される。 表面処理はその問題を解決する有望な手法である、その他にも様々な機能を表面に付与することができる。
  ここでは、主なマグネシウム合金への表面処理とその特徴ならびに問題点を紹介するとともに、 演者らが開発したリン酸塩陽極酸化処理とその防食メカニズムについて述べる。
【リン酸塩陽極酸化被膜とその適用例)】
  ◆会員発表 「酸化鉄の工業的製造方法」
発表者:片元 勉 氏 (戸田工業株式会社 創造本部 基盤技術開発部グループ 専任部長)
<発表概要>
 弊社は創業時より、鉄さびの一種である酸化鉄を製造している。  金属鉄製品にとって、鉄さびは機能性を損なう大敵であるが、工業的に製造される酸化鉄は、着色顔料・化粧品・磁性材料・触媒等に幅広く利用されている。
 弊社で生産している酸化鉄の粒子の大きさは、0.01μmから100μmで、その粒子形状・結晶構造・色には様々なものがある。 このような酸化鉄粒子を弊社では湿式合成技術を駆使して製造しており、当日は酸化鉄の湿式合成技術の一端を紹介する。
 一方、弊社では酸化鉄の合成技術を発展させ、酸化鉄以外の金属粒子粉末を乾式法で製造している。 その際には、製品特性を保持するために表面処理技術を用いているため、これについても紹介する。
【ベンガラ塗装木製橋】
  ◆話題提供 「ステンレス鋼中の析出物と電気化学的再活性化測定法について」
  提供者:今川 真伸 氏 (広島工業大学大学院 工学系研究科 王研究室 )
○ 第7回研究会開催(平成27年3月3日開催)
■日  時 平成27年3月3日(金) 14:00〜17:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 第1研修室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆講 演 「腐食損傷から学ぶ金属の腐食・防食技術」
講 師:高谷 泰之 氏
(トーカロ株式会社 溶射技術開発研究所 技術支援センター長)
<講演概要>
 金属部材の腐食損傷は日常的に起きており、腐食には製品の美観を損なうだけのさびや変色と、漏水などを引起こす孔あきなどがある。
 それらの損傷を防止することが不可欠であるが、防 止対策を講じることに苦慮しているのが現状で、同じ 損傷を繰り返す場合もある。
 ここでは、月刊誌「溶接技術」産報出版に連載した 事例をもとにステンレス鋼やアルミニウムなどの非鉄 金属の腐食損傷を紹介し、それらの原因を調査/解析 することによって、その後の腐食を防止する指針が見 出されることを解説する。
【ステンレス鋼の応力腐食割れ】
  ◆会員発表 「アーク溶接部の耐食性」
発表者:深堀 貢 氏 (マツダ株式会社 技術研究所 先進車両構造研究部門 アシスタントマネージャー)
<発表概要>
アーク溶接部は、腐食環境で平面部に対して早期に 発錆する。これは、機能上の問題はないものの見映え の点で問題が有り改善が望まれている。
 市場回収品や腐食サイクルテストの結果から、発錆 は溶接部のスラグ、酸化スケール、溶接部近傍のエッ ジが起点となっていることが分かった。
 これらについて、個々に発錆の影響を調査し、発錆要因の定量化を図った。また、この結果を元に改善策 を検討した。
【溶接部錆外観と断面写真】
  ◆話題提供
    発表1 : 「液中プラズマを用いたCNTめっき液への分散およびNi-CNT複合皮膜の作成」
発表者:古川 翔馬 氏(広島工業大学大学院 工学系研究科 王研究室)
    発表2 : 「Ni-P-MxOy系複合皮膜の作成と耐食性評価」
発表者:王 栄光 氏(広島工業大学 工学部 機械システム工学科 教授)
○ 第8回研究会開催(平成27年10月16日開催)
■日  時 平成27年10月16日(金) 15:00〜17:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 視聴覚研修室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆講 演 「材料腐食・劣化の基礎と腐食試験のすすめ」
講 師:礒本 良則 氏
(広島大学大学院 工学研究院 物質化学工学部門 准教授)
<講演概要>
 身の回りの金属,プラスチック,セラミック等の材料は使っているうちに壊れてしまい、 “困った”思いをすることがしばしばありますが、自然界に存在する物質を人間が使い易いように作り替えた物質は、 必ず壊れるものです。しかしながら、この材料劣化のメカニズムを知ることにより、壊れ難くすることも、長く利用することも可能です。
 ここでは、『材料腐食・劣化の基礎』と題し、材料腐食・劣化のメカニズムの基礎について述べ、 簡単な演示実験を行うとともに、防食技術につながる腐食試験が手軽にできることを紹介します。
【自作腐食評価装置】
  ◆話題提供
    「意外に自作できる材料劣化・腐食評価装置,腐食モニタリング」
発表者:礒本 良則 氏(広島大学大学院 工学研究院 物質化学工学部門 准教授)
○ 第9回研究会開催(平成28年3月11日開催予定)
■日  時 平成28年3月11日(金) 13:30〜17:00
■場  所 広島県情報プラザ 2階 会議室 (広島市中区千田町3丁目7番47号)
■内  容
  ◆講 演 「エロージョンの基礎及びポテンシォスタットを用いた分極測定」
講 師:礒本 良則 氏
(広島大学大学院 工学研究院 物質化学工学部門 准教授)
<講演概要>
 エロージョン現象による装置材料の劣化は、コロージョン(腐食)に比べると遙かに大きな損傷速度に達する可能性があり、思わぬトラブルになりかねない。また、プラント現場では流動環境下のコロージョンが発生する中、エロージョンが併発している場合も多い。本講演ではエロージョン現象の基礎的な部分について解説します。
また、金属材料についての耐食性の評価や腐食状態を推測するために高価な自動分極計測装置が多用されていますが、実は、安価なポテンショスタット、AD変換器、パソコンがあれば、比較的簡単な分極測定も可能です。本講演では計測装置のセットアップ方法を紹介し、分極測定の演示実験をすることにより、分極測定の基礎的な部分についても解説します。
【自作の分極計測装置】
  ◆講 演 「ステンレス鋼の基礎から利用技術まで」
講 師:中山 元 氏
(株式会社IHI 基盤技術研究所材料研究部 主幹研究員(腐食防食専門士))
<講演概要>
   「ステンレス鋼は錆びない」と信じ込み無邪気に使うと、思わぬ落とし穴にハマる恐れがあります。 本講演では「ステンレス鋼がなぜ錆びないのか?」や、「どのような状態になれば、ステンレス鋼でも錆びたり、割れたりするのか?」といった基礎的な部分を解説すると共に、物造りに当っての注意点についても解説します。

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※定数に達し次第、申込受付は終了させていただきますので ご了承ください。